キャリブレーションの考え方

いつもお世話になっております。今回は「接触角計のキャリブレーション」についてのコラムになります。よろしくお願いします。

本年(令和3年)も残すところあと僅かとなりましたが、引き続きあすみ技研をどうぞよろしくお願い致します。

さて、本コラムをご覧の皆様は「接触角計のキャリブレーション」と聞いてどんな想像をされるでしょうか?キャリブレーションという言葉自体、日常会話ではまず耳にしない言葉だと思いますし、業種によっては全く出てこないこともあるかと思います。

そこでまずは「接触角計のキャリブレーションとは?」からご説明させていただきます。ぜひ最後までご一読ください。

そもそも「キャリブレーション」とは

較正(こうせい、calibration)は、測定器の読み(出力)と、入力または測定の対象となる値との関係を比較する作業である。較正が本来の表記だが、「較」(コウ)は常用漢字の音訓表にない読みのため、校正(こうせい)またはこう正と表記することもある。「かくせい」とは読まない。(出典:Wikipedia)

キャリブレーションとは校正、調整などの意味を持つ英単語です。ドイツ語ではkorrekturlesenと言います。測定器で標準通りの値を得るために標準器(Specified Standard Instruments)などを用いてその機器の偏りを計測したり、正しい値になるよう調整することをさします。

とまあ上記のような答えがインターネット上で検索すると出てきます。要するに校正作業のことです。

参考リンクを掲載しておきます。

「わざわざ英単語にせずともよいのに」と個人的には思っておりますが、接触角計の校正作業については横文字となっております。ただ接触角計のキャリブレーションは通常の測定機器のそれとは少し意味合いが異なることも事実としてあります。もしかしたらそのあたりが表現に関係しているのかもしれませんが・・・・。まあこれはあくまで私の勝手な想像です。

さて、では一般的な測定器と接触角計でどのように校正作業(キャリブレーション)が異なるのかをご説明します。

一般的な測定機器・・・と言うと色々なので、ここではノギスを例にご説明します。

ノギスの校正作業というとご承知の方も多いと思いますが、ブロックゲージを標準器として用いて行います。

ノギスはそれ自体で直接長さを測定する機器です。

ノギス
ノギス

当然使用する標準器は校正証明を取っていなければ校正作業自体に意味がありません。

それに対して弊社の接触角計のキャリブレーションは直径3mm(精度±3μm)の校正球を標準器としてそれを接触角計のカメラで撮影。撮影した校正球が縦横方向で直径がそれぞれ何pixelに相当するかを確認しております。

接触角計用校正球
接触角計用校正球(直径3mm)

ここまでお読みになられて疑問を持たれた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

「接触角計のキャリブレーションもブロックゲージや角度ブロック等の狂いのない標準器を用いて直接測定をおこなえばいいのに・・・・」と。

これは接触角計がノギスや傾斜計等のように直接長さや角度を測定する測定器ではなく、液滴の大きさをpixel数に変換して、そのpixel数を元に種々解析方法にて角度を測定する測定機器だからです。

つまり、接触角計で重要なのは液滴をカメラのフォーカスが最も合っていると思われる状態で撮影した時、液滴の縦横長さが何pixelに相当するのかということです。

真円に限りなく近い校正球をカメラのフォーカスが最も合っていると思われる状態で撮影した時のpixel数が確かならば、測定値も確かという考え方です。

キャリブレーションイメージ図 ※校正球(3mm)がカメラでの撮影で何pixelに相当するのかを決定
キャリブレーションイメージ図 ※校正球(3mm)がカメラでの撮影で何pixelに相当するのかを決定

弊社では接触角計のキャリブレーションをこのような考えで行っております。

接触角計のキャリブレーションはノギスや傾斜計のようなアナログではなくデジタルとなる為、一度キャリブレーションを行ってしまえば、定期的にキャリブレーションを行う必要は「基本的」にはありません。

では最後に「基本的」でない時・・・・つまりキャリブレーションをした方がよい時は、どのような時なのかをご説明します。

①装置の使用環境が大きく変わった場合。

室内の明るさが極端に変化した時などはキャリブレーションを行っていただくことを推奨致します。一般的な室内環境間での移動であればキャリブレーションは不要です。

但し、窓際や太陽光の反射光が差し込むような環境での接触角計のご使用はやめてください。測定の妨げになります。

②不特定多数の人間が装置を操作する場合

誤ってキャリブレーション設定をおかしくしてしまう場合も考えられる為。

定期的にキャリブレーション設定を確認いただくことを推奨致します。 

とっつきにくいテーマであるにも関わらず、文章多めのコラムになりまして恐縮です(汗)

 

接触角計をレンタル、またはご購入される御客様からポツポツといただくご質問でありましたので、今回コラムで書かせていただきました。ご参考にしていただければ幸甚です。

 

それでは今回もお付き合いいただき、ありがとうございました。

(T.S)