表面自由エネルギー 用語解説 Ⅰ
今日もあすみ技研接触角計コラムをご覧いただきましてありがとうございます。最近社内で接触角計について話していてそこから表面自由エネルギーの話になったのですが、そこで「あれ?結果としてこうなる、ということはよく知っていても、意外とその過程については理解が浅い部分もあるのかな」と思いました。
そこで今回は弊社ホームページ上の「表面自由エネルギーとは」のページに出てくる基本的な用語をまずは解説していこうと思います。よろしくお願いします。
早速用語を解説…といきたいところですがそもそも原子ってどういうものなのかイメージしていただきたいので、基本的な原子の構造から解説していこうと思います。
原子の構造&電子の動き・分布
原子(atom)は正に荷電した原子核と電子(electron)から成り立っており、原子核は正に荷電した陽子(プロトン:proton)と荷電のない中性子(neutron)で成り立っています。
それぞれの位置関係ですが、陽子と中性子で構成される原子核を中心に電子が飛び回っています。よく電子は原子核の周りを衛星のように回っていると考えられている方がいますが、実際には電子の動きには不確定性があり原子核の周りを超高速で飛び回って雲のように存在していると現在では考えられています。電子の存在は確率密度関数で表され、これを電子雲といいます。
電子雲について
無数のタイミングで電子の位置をプロットしていくと雲のように見えることから電子雲といいます。濃い場所は電子が高確率で存在しており、薄い場所は電子が低確率でしか存在していません。
分子も同じように表すことができます。
水素分子(H2)で例えると、まず水素原子(H)は電子を全部で一つ持っており、水素分子になるためにはもう一つ水素原子を用意して、計2つの電子を共有することで水素分子となります。水素分子はよく電子を・と表してH:Hと表されますが、電子は:の部分にいるわけではなく実際には2つの原子核の周りを高速で動いている形になります。
このように、電子は原子でも分子でも常に動き回って電子雲を形成しています。
極性分子と無極性分子
分子ひとつ単位で電荷をみると、正に荷電した原子核と電子の数は一致しており正にも負にも基本的には荷電していません。しかし、その分子の一部を切り取って見ると電荷が偏っていることがあり、そのような分子のことを極性分子といいます。
例えば塩化水素(塩酸:HCl)は2つの原子で成り立っている分子で、電荷を分子全体でみるとプラスマイナスゼロですが、部分的にみると水素原子側が正に、塩素原子側が負に電荷が偏っています。これは、原子の大きさや電子の数、分布等の要因により原子の種類によって電子を引き付ける強さが違うためです。この原子が電子を引き付ける強さのことを電気陰性度といいます。塩化水素の場合だと塩素原子の方が水素原子と比較して電気陰性度が大きいため塩素側に負の電荷が偏っています。逆に水素分子(H2)のように電気陰性度による電荷の偏りがなく、且つ構造的にも電荷の偏りがない分子のことを無極性分子といいます。
電気陰性度:Cl>H
図3. 極性分子と無極性分子
肝心の用語解説が出来ていませんが、前知識部分が長くなってしまったので一旦ここで中締めとさせていただきます。次回はいよいよ実際に出てきた用語について解説していこうと思いますので、どうぞよろしくお願いします。最後までお読みいただきありがとうございました。
(M.H)