表面自由エネルギー計算で使う試薬の選び方
今回もコラムをご覧いただきまして、ありがとうございます。今回のコラムは御客様からよく頂くご質問をテーマとしました。
今回のテーマは「表面自由エネルギー計算で使う試薬の選び方」についてです。
日頃、御客様と表面自由エネルギー計算についてやり取りをする中で「試薬ってどんなのを使うの?」ですとか「いくつ使うの?、それしか使えないの?」というご質問をよく頂きます。年々、表面自由エネルギー計算についてのお問合せも増えている実情もありますので、
これからもっと表面自由エネルギー計算についてのコラムを書いていこうと思っている中、
まずは試薬について書いておこうかなぁ・・・と思ったのが今回のコラムです。それではよろしくお願いします。
さて、ここから本編です。このコラムをご覧いただいているということは既にご存じの方が
ほとんどとは思いますが、まずは表面自由エネルギーについて簡単に説明を。
表面自由エネルギー計算とは?・・・固体における液体の表面張力にあたるもの。液体の表面張力は、直接測定できますが固体の表面張力は直接測定できないので、成分が既知の複数の試薬を使って接触角を測定し、その結果から固体の表面張力にあたる表面自由エネルギーが算出することができます。
とまあ、一言でいうとこういうことなんです。もう少し詳しく知りたい方は下記リンクも頑張ってぜひご一読ください(汗)。
その表面自由エネルギー計算にはいくつかの理論式があり、弊社では5つの理論式を採用しています。理論式によって使える試薬や使う試薬の数が違うのですが5つの理論式の中で2式は使う試薬が3種類、他の3式については2種類の試薬で計算ができます。表面自由エネルギー計算は表面自由エネルギーを2つの成分もしくは3つ成分に分けて計算をします。
そのため試薬は成分の数だけ必要となってきます。つまりは2成分でしたら2種類、3成分でしたら3種類必要という具合です。
前置きが長くなってしまいましたが、表①が弊社で採用している表面自由エネルギー計算の
理論式と主な試薬の対応表になります。
表①から「水」と「ジヨードメタン」があれば5つの理論式の中の3つについては計算できることがおわかりいただけると思います。さらに「ホルムアミド」や「n-ヘキサデカン」を加えることで試薬を3つ必要とする理論式にも対応することができるようになります。
「Kitazaki and Hata(北崎・畑)」や「Acid-Base(酸・塩基)」の理論のように試薬の候補が複数ある中から3つの試薬を選択する場合もありますが、後に理論を変更する可能性も考慮してマイナーな試薬ではなく、メジャーな試薬を選択されるのがよろしいかと思います。
一般的に広く使われている試薬は「水」、「ジヨードメタン」、「n-ヘキサデカン」です。
「水」なら、近くの薬局などで手に入る「精製水」を利用できます(コンタクトレンズをご利用の方はご存じだと思いますが、数百円です)。また、「ジヨードメタン」、「n-ヘキサデカン」なら、数千円くらいでお買い求めできます(当社でも取り扱っております)。
最後に表面自由エネルギー計算の作業性とよく使われる理論式ついて書かせていただきます。
「計算の作業性」とは厳密にいえば、計算の前段階の接触角の測定作業のことです。例えば3つの試薬で接触角を測定する場合、試薬が2つの時と比べて作業量は1.5倍となります。試薬が3つより2つの方が楽だからという理由が全てではないと思いますが、「水」と「ジヨードメタン」の2つの試薬で計算を行うのが一般的となっています。試薬2つで計算ができる理論の中でも「Owens and Wendt」の理論を使用する方が多いようです。
これからもちょっとずつにはなりますが表面自由エネルギー計算についてコラムを書いていきますので、よろしくお願いします。最後までお読み頂きありがとうございます。
(Y.S)