測定のコツ・ポイント:表面張力測定編
いつもお世話になっております。接触角計コラム担当のT.Sです。今回のテーマは「測定のコツ・ポイント」にフォーカスを当てようと思います。
当社の装置をレンタルもしくは購入していただいた御客様から頂戴する質問として、
- レンタル機には密閉された袋に入ったシリンジが同梱されているが、密閉されているから洗わずにそのまま測定で使用して問題は無い?
- シリンジ内に空気が入ってしまうのですが、問題あります?
- 測定時の明るさやフォーカスの合わせ方に順序や基準はある?
- 測定に使用する針の太さはどれを使えばいい?針の太さは測定値に関係する?
といった内容が多いように感じます。
そこで今回は表面張力測定のコツ・ポイントについて当社なりの考え方、コツをご紹介しようと思います。もちろん絶対にこうしなければいけないということでありませんので、こういう手法もあるんだなというくらいに見ていただければと思います。それでは今回もよろしくお願いします。
表面張力測定の流れとコツ
Question:レンタル機には密閉された袋に入ったシリンジが同梱されているが、密閉されているから洗わずにそのまま測定で使用して問題は無い?
Answer:測定対象の液体でガラスシリンジと針の「共洗い」を行う。
当社から出荷したガラスシリンジや針は洗浄済みですが、測定前には共洗いをしていただくことを推奨します。当社の「共洗い」のやり方はこんな感じです。
ここで「共洗い」という聞きなれない言葉が出てきましたが、化学分析の用語になります。
共洗い(ともあらい)は化学分析時に行う準備作業の名称である。
液体を容器に採り、当該の液体に対する化学的分析を試みる場合に、液体採取に先立って行われる作業であって、もっぱら次のような手順で実施される。
共洗いの主たる目的は、容器内部に付着している、分析対象となる液体以外の物質を、予め除去することにある。同時に、容器洗浄に用いた水分が付着していることで、分析対象の液体の濃度に影響を与えることのないようにする目的もある。
- 洗浄済みの容器に、分析対象の液体を適量採る。
- 容器を十分振るなどして、容器内部を分析対象の液体を用いて洗浄する。
- いったん容器から液体を(おおむね)除去する。
- 改めて、分析対象の液体を分析に必要な量だけ容器に採り、実際の分析を実施する。
分析対象となる液体がふんだんに採取できることが、共洗いを行うための前提条件である。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
①針を取付けたシリンジをマニュアルディスペンサにセットした後、写真のようにディスペンサを持ちます。このように持つと共洗いがやり易いです。
②親指と人差し指でシリンジのピストンを 押込んだ後、離すとスプリングにより自然にピストンが戻るので液の吸引ができます。針の内径が細くなってくると、吸引時の抵抗が大きくなるので吸引はやりにくくなります。その場合は針を一度外して吸引、吸引後に針を取付けて吐出していただければOKです。
③吸引した液を吐出、排液します。①~③の作業を当社では10回を目安に行っております。シリンジが汚れていた場合の洗浄と共洗いについては当社ではIPAで5~10回程度吐出吸引を繰り返して洗浄した後、測定対象の液で共洗いを10~15回程度行います。
Question:シリンジ内に空気が入ってしまうのですが、問題あります?
Answer:簡単に抜くことが可能です。
シリンジ内のエアー抜きのやり方
液を吸引する際、液と一緒に空気も吸い込んでしまうことも少なくありません。そのまま測定をしようとすると、空気を巻き込んだ状態で吐出してしまい懸滴が上手く作成できませんし、空気の影響で懸滴量の調整も思うようにできなくなります。弊社ではこのようにエアー抜きを行っています。
①液吸引すると赤丸のようにエアーも一緒に吸ってしまいます。
②針先を上に向け、エアーを針先の方へ移動させます。この時、エアーが抜けやすいように針の中心と同軸状にあるようにするのがポイントです。同軸状に無い場合は指先でシリンジ先端をはじいて移動させたり、上下に揺さぶってエアーを同軸状に移動させます。
③エアーが針の中心と同軸状に移動したら、ディスペンサのマイクロメータヘッドを回すとエアーを抜くことができます。
Question:測定時の明るさやフォーカスの合わせ方に順序や基準はある?
Answer:ちょっとしたコツで簡単にフォーカス可能です。
測定時、明るさとフォーカスを調整することで鮮明に像を映すことができます。測定画面の「ライブビューモニタ」の右上にはフォーカスアシストレベルという数値が表示され、100を最大値として現在どれくらい像が鮮明に映っているかを確認することができます。それでは明るさの調整とフォーカスの合わせ方を説明します。
①-1:光量調整ノブを回して徐々に光量を上げていくと、画面中心から放射状に明るくなっていきます。光量調整の目安としては画面の四隅がギリギリ明るくなるくらいが丁度いい明るさとなることが多いです。「多い」というのは当然ながら例外も存在します。それについてはまた別のコラムで。
①-2:この状態ではまだ光量が足りません。画面の四隅がまだ暗いのが見てわかると思います。もう少し光量調整ノブを回し・・・・・
①-3:画面の四隅がギリギリ明るくなった状態になりました。この状態であれば明るさの調整は完了です。
光量の調整ができたら、装置のフォーカス調整ノブを回してカメラの前後位置を調整してフォーカスアシストレベルが最大となる位置を探します。この手順で明るさとフォーカスを調整すれば、フォーカスアシストレベルは95以上には必ずなります。95以上であれば測定には十分です。
Question:測定に使用する針の太さはどれを使えばいい?針の太さは測定値に関係する?
Answer:針の太さは表面張力には依存しません。
結論から言うと針の太さは表面張力には依存しないので針の太さはどれを使用しても良いというのが弊社の考えです。ただ針が細いと針先に作成できる懸滴の大きさは小さくなり、懸滴も静止せず安定しないことが多いので、極端に細い針よりも弊社針サイズであれば20G、25Gくらいでまずは行うのが良いと思います。針の太さに依存しないというのは下の写真を見ていただければとわかると思います。
あと、表面張力測定時には対象となる液体の密度がパラメータ値として必要となりますのでお忘れなく。表面張力測定では像が鮮明でないと測定値の確からしさ、再現性に影響します。今回のコラムが表面張力測定をされる御客様にほんの少しでも参考になれば幸いです。それでは今回はこのあたりで。最後までお読みいただきましてありがとうございます。
(T.S)